ESULOG

30代会社員による雑記兼アウトプット修行

「『だいすき』を無邪気に伝えられる人だったら」とすら思えないぼく

それでね、こんなこと言ってくれてね。
幸せそうに語る女が手に抱えているのはレモンサワーのジョッキ。
これがティーカップだったらもっと女子会らしかったのにね、なんて思いは声には出さず、向かいの私もお揃いのジョッキをくちびるに向かって傾ける。


目の前の女は、かわいい。
女の私が見てもかわいいし、酔ったこいつは色気がある。
過去の男に痛い目に遭わされた反動でビッチ化しているのが少々心配だが、リスクも自己責任も理解しているのでまあいいかと見守っている。
私としては平穏な幸せを一日も早く掴んでほしいのだけど、ちょっとリスキーな方が刺激的で楽しいというのもわからんではない。


目の前の女は、かわいい。
机に置いたiPhoneの画面が点灯する。ちらっと画面を確認する彼女の目は女のそれだ。素直でわかりやすい。
LINE返したら、と声をかけると、いいの?と首をかしげてこちらを見る。その首の角度、地でやる女いるんだ。
嬉しそうにiPhoneと対峙する彼女を肴に、手元のレモンサワーを空ける。彼女のジョッキももう終盤。
レサワでいい?うん、ありがとう~。目も合わせない会話を交わして、店員を呼ぶ。


目の前の女は、かわいい。
返信を打ち込む彼女をぼんやり眺めながら煙草を吸う。
私がこれくらい素直に恋愛を楽しめるかわいげのある女だったら、また違う人生だったんだろうか。
数年前に別れた元カレを、一瞬付き合った昔馴染みを、10代のときの拗らせた片想いを反芻する。
あの時の私が「好き」という感情を全面に出していたら… いや無理だ。想像できない、鳥肌立つ。


目の前の女は、かわいい。
彼女がiPhoneを机に置くと同時に新しいレモンサワーが届いた。店員にお礼を言う姿もやはりかわいい。
彼女は送ったーと嬉しそうに言いながら、新しいレモンサワーに手をつける。
よかったねえと相槌を打って、先ほどのぞっとするような想像をレモンサワーと一緒に流し込む。
私の胸の内を知らない彼女は、あなたと飲むお酒はやっぱりおいしいと無邪気に笑う。
応えるように、もう一口呷る。


目の前の女は、かわいい。
それは嫉妬も軽蔑も謙遜もない、純粋な羨望。