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30代独身会社員のあれこれ雑記

#ミステリーの推し犯人

最近X(旧Twitter)で #ミステリーの推し犯人 というハッシュタグがトレンド入りしているのを見かけました。いろんな人のつぶやきを横目に、私は誰が好きかな…と考えてみたらだらだらと長くなってしまったのでつぶやきではなくブログでつらつら書こうと思います。

 

兇人邸の殺人/今村昌弘

ーーー犯人は探偵の敵なのか。

好きな犯人を問われて一番最初に出てきたのがこちらの作品。先述の主人公である葉村のモノローグが単なる悪人ではないということを物語っていると思います。これはかなり考えさせられる一行でした。

こちらの犯人は、きっとまっすぐでピュア。だからこその殺人という過ちの選択をしてしまったのかなと思います。う〜ん思い出してもつらい。

「犯人」から話はそれますが、探偵って情を切り捨てて全ての可能性を追わなくてはいけないんですよね。金田一とか金田一とか金田一とか。兇人邸では安楽椅子探偵に徹した比留子も然りです。それって難しいことで、それができるから探偵役は天才と評されることが多いのだと思います。葉村は冒頭の引用のように想いを馳せてしまう人間臭い思考を捨てきれない人。そういう点でも、やはり葉村はホームズではなくワトソンなんだなと思います。そういう彼が、人間らしくて私は大好きです。

言わずもがなですが、屍人荘シリーズは本当に名作。トリッキーな設定でクローズドサークルを作り上げ、SFでありながら圧倒的にフェアなミステリを書き上げる…今村先生天才ですマジで。その中でもいちばんのお気に入りがこの兇人邸の殺人です。続編も楽しみ。

 

十角館の殺人綾辻行人

本格ミステリにどハマりするきっかけとなった館シリーズ。別の館を挙げて通ぶりたいところでしたが、「好きなトリック」とか「好きなお話」ではなく「犯人」にフォーカスを置いた時、やはりこの人になってしまいました。狡猾で用意周到な犯人なのに、どこか人間らしさを捨て切れない妙な生々しさが好きです。

あとやっぱ、アレ言ってみたい。読了者はみんな言ってみたいやつ。言うシチュエーション皆無だけど言ってみたい。

余談ですが十角館の殺人、コミカライズなかなかよかったですね。ビジュアライズ困難とされる作品な上に原作からアレンジもかなり入っていましたが、素敵なコミカライズだったと思います。3巻で描かれたダリアの花は寒気すら覚えました(館シリーズを読み進めるとこの意味がわかります)。

エラリイのたばこがiQ◯Sになっていたのはちょっと雰囲気に欠けるな…と思ってしまいましたが、時代背景を現代に移しているのでまぁそんなもんか。そもそも昨今の大学生はたばこ吸うのかな?

 

人形館の殺人綾辻行人

館シリーズからもう一人ピックアップ。館シリーズの中でも一風変わったというか、賛否両論のある作品です。賛否両論あることの理由は、読めばわかります。

正直最初のほうは展開もスローでずうっと続く曇天のような感じで、読んでいてダレることも多かったのですが、クライマックスにかけての疾走感はすごかったです。そこの痛快さが忘れられなくて、館シリーズの中でも結構好きな作品になりました。

この犯人は「推し」というと少し違うかもしれないのですが、「お前かよ」という意外性、そして判明してからどうしてこの人はこうなってしまったのか?をたくさん考えさせられる点が好きでした。

 

御手洗潔の挨拶 数字錠/島田荘司

探偵御手洗による短編集「御手洗潔の挨拶」に収録されているお話のひとつ、数字錠。解決に至るロジックもさることながら、犯人の人柄がとても印象的で大好きなお話です。お話が短い分うかつに話すことができないのですが、きっとこの犯人は罪を償った後に前を向いていけるだろうと信じています。犯人の見当をつけてからの御手洗にも注目の一作です。

島田先生のお話は結構1作1作がボリュームたっぷりなのですが、こちらは短編集なので1作ごとは結構さくっと読めます。「疾走する死者」とか、2時間後に始まるテレビを見たいがために怒涛の勢いで解説する御手洗がもはや笑えます。

 

検察側の証人アガサ・クリスティ

こちらは小説ではなく戯曲。犯人とは少し違うのですが、このお話には「容疑者」と「検察側の証人」、2人のキーマンが出てきます。そのどちらもすごい面白味があって大好き。「容疑者」の人たらしっぷりも最高なんですが、やっぱり「検察側の証人」のインパクトはいつ思い出してもたまらないものがあります。

ジャニーズWESTの小瀧くんがこの容疑者であるレナードを以前演じられたわけですが、観たかった…絶対似合うじゃん…観たかった…

思えば、(金田一少年の事件簿を除いて)私が初めて触れたミステリはこれだったかもしれません。怒涛のクライマックスに圧倒されて放心した、あの感覚はずっと忘れないと思います。

 

金田一少年の事件簿 怪盗紳士の殺人/天樹征丸金成陽三郎さとうふみや・船津紳平

金田一は基本的に犯人に同情を禁じ得ないストーリーが多いわけですが、私が特に好きな犯人はこちら。いやこれはマジで泣ける金田一。ネタバレのないように言うにはこれしか言えない、むしろちょっとバラしてるかもしれない。読んでほしい。

ドラマの金田一は私金田二と金田五しか通っていないのですが、堂本剛くんのときに怪盗紳士の殺人やってるんですね。AmazonにDVDが売っていてちょっと気になる。ちなみに金田二と五なら五が好きでした。やっぱりはじめちゃんには茶目っ気たっぷりでいてほしい。

金田一には皆さんおなじみ「犯人たちの事件簿」がありますがあれ全部おもろいですよね。犯人たちの事件簿が面白かったというところで言うと、悲恋湖殺人事件は外せないと思います。声出して笑いましたし、あいつを使いたいがためにLINEスタンプ買いました。もちろんですが本編も名作。連続殺人の動機は圧倒的狂気。そしてミステリアスな「その後」がまた面白い。

怪盗紳士の殺人、悲恋湖殺人事件はそれぞれ本編と犯人たちの事件簿がワンセットになった版が売っているのでおすすめです。

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他の人のつぶやきを見て

X(旧Twitter)ではクリスティの「オリエント急行殺人事件」「カーテン」、知念先生の「硝子の塔の殺人」なんかがよく挙がっていましたね。うんうん、わかるわかる。実はポアロがあんまり得意じゃないんだけど先述の2作は圧巻だった。硝子の塔もめちゃわかる。知念先生の癖を感じる。

森博嗣すべてがFになる」と答えている人も居てなるほど!と思いました。確かにあの犯人はどこか魅力を感じてしまう人だった。

「ネタバレを気にしなくて良い」という理由で古畑任三郎の事件や怪人二十面相がよく名前挙がっていたのは笑いました。確かにネタバレ配慮いらんわ。

古畑、最近日中に再放送しているのを見かけましたがやっぱり面白いですね。自分が犯人だったらめちゃくちゃうざいだろうなと思います。私がまだ子供の頃にやっていたのでうろ覚えなところが多いのですが、さんまさんの奴また見たいなあ。

我孫子武丸先生の「殺戮にいたる病」もよく名前が挙がっていたように思います。こちら超有名作ですがまだ読んだことがないので気になるリストにインしておきます。積読が…増える…

金田一でいうとやはり地獄の傀儡師の名前が多く見られましたが、まあそりゃそうですよね。アレはみんな好きでしょ。チートでしょ。

 

ミステリはフィクションだからこそ楽しめるものというのは大前提として、やはり同情を禁じ得ない憎めない犯人も居れば、何一つ共感できないほどに狂気じみているからこそ面白い犯人もいる。人間って面白いな~と改めて感じた推し犯人探しでした。